モリサワパスポートの更新をしました
ウチの会社で契約している商用フォント使用ライセンス『モリサワパスポート』の年間契約の期限が近づいたので、先日更新しました。
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パソコン1台へのインストールにつき、1年間の使用ライセンス料が約5万円。
台数や契約年数が増えれば割引もありますが、月額だと約4千円ですね。
結構負担が大きいです。
ウチは作業用パソコンが1台しかないのでまだ良いですが、普通以上の規模のデザイン事務所や印刷会社には平気で5台10台あるでしょうから、本当に大変だろうと思います。
しかもこのネット全盛のご時世に、(メーカー側にもいろいろ事情があるのでしょうが)更新手続きがネット上でできないのがかなり面倒。
例えばウチの場合だと、
- 事務所から約10キロ離れた仙台駅前のヨドバシカメラまで出かけていって、継続ライセンスの申込書を手渡す。
- 数日後にメーカーからライセンス証明書のパッケージが届いたら再び出かけていって、お金(約5万円)を払って受け取る。
- パッケージと言ってもその本体は、一枚の紙の中央に小さく印刷された単なる4桁×3の文字の羅列(ライセンスキー)。作業用パソコンで専用ソフトを起動してこのライセンスキーを入力し、インストールしてある全フォントデータのライセンス記録を書き換える。
…という流れです。
モリサワパスポートは契約更新の手続き方法がこれしかなく、ウチの場合は年一回ですが、この手続きだけのためにヨドバシカメラに2回出かけていかなければなりません。
…というか、
東北地方の取扱店は仙台と郡山のヨドバシカメラだけ
らしいんですよね。
ウチはまだ仙台市内だから助かっていますが、青森や秋田にあるデザイン会社さんとか、どうしてるんだろ…?
本当に良いフォントを使って初めて分かる、価値
デザインの作業をしていると、質の高いフォントがどうしても必要になります。
まして業務に使う場合には、必須です。
特に広告、出版、印刷関係では、モリサワというメーカーのフォントは業界標準で、はっきり言って無いと仕事になりません。
代わりが無いので、多少高くても、不便でも、仕方ない部分があるんですよね。
…などと憎まれ口ばかりたたいていますが、このモリサワのフォント、値段が高く定評もあるだけに、さすがに品質や信頼性に関しては文句なしです。
これ一つを契約してしまえばモリサワの全てのフォント(なんと1000書体以上!)が全て使い放題ですし、書体ひとつひとつのデザイン性が優れているのは言うまでもなく、フリーフォントなどで時々あるようなデータ上の小さな不備(文字の不足や誤り、パスが切れているような問題など)も、見かけたことがありません。
既に5年以上使っていますが、フォントそのものに不満を感じたことというのは、一度もありません。得てきた恩恵をいろいろ考え合わせると、決して高い買い物ではなかったように思います。
それに、モリサワパスポートに契約すると自動的にTypeSquare(webフォント)を追加料金なしで使えるようになるのも、嬉しいところです。(私は、まだまともに使っていませんが…^^;せっかく使用権があるので、この先徐々に活用していきたいです。)
これからデザインのようなことをやってみたいという人はもちろん、余計な心配(次章参照↓)をせずに快適にフォントを使いたい、印刷物をひと味違うものに仕上げたいと考えられている方は、このモリサワパスポートを買ってみるのも案外選択肢の一つかも知れません。
さすがにプロ用だけあって、世の中で広く目にする広告物や出版物で使われているフォントが満載なので、作品の仕上がりも変わること請け合いです。
面倒だったりお金が掛かったりはしますが、それを補って余りある見返りがあることだけは、間違いありませんよ。
フォントにも、著作権があるんです
・・・・・
さて、さっきから何のことやらさっぱり分からないという方もいらっしゃるかも知れませんが、要はちゃんとしたフォントファイル(字体ファイル)を使うのには結構お金が掛かるんだよね、という話です。
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改めて書くまでもないかも知れませんが…
フォントファイルとは、文字の形をした膨大な数の画像データ(欧文フォントで最大256個、和文フォントは最大6879個)を収め、コンピュータのOSや変換システムによって一つ一つを簡単に呼び出せるようにセットされたファイルのことです。
(windowsファイルの場合の拡張子は、『.ttf』、『.otf』などです。)
例えば日本語の場合、皆さんもよくご存じの明朝体、ゴシック体をはじめ、大まかに分けて何種類かの書体がありますが、例えば明朝体一つをとっても癖があったり、太さが違ったりと、バリエーションはそれこそ無限にあり、その一つ一つに違った名前がついており、別の種類のフォントとして扱われます。
皆さんは今このブログをパソコンやスマホで見ていると思いますが、パソコンやスマホには何種類ものフォントファイルがインストールされていて、ウェブサイトを見る時はネット上からダウンロードしたデータを元にブラウザソフトが文字データを連続的に呼び出し、画面上に表示させるという仕組みになっています。
ワープロソフトや表計算ソフトの表示・印刷にももちろんフォントが使われますし、パソコンやスマホを使っている方は、何らかの形で必ずフォントを利用しているはずです。
そして実は、このフォントファイルもまた、著作物の一種です。
ですので、絵や写真などと同じく、それぞれにちゃんと
著作権
があることを、忘れてはなりません。
…と言っても、フォントの著作権というのはちょっと分かりにくくて、独創性があると判断されるユニークな書体や、純粋に美術性の高い毛筆書体などを除いて、一般に明朝体やゴシック体などをベースにした無個性な書体に対しては、デザインそのものには著作権は無いものと解されています。
(例:『ゴナ書体事件』最高裁第一小法廷判決、平成12年9月7日。)
ではフォントの著作権とは一体何なのかというと、書体の見た目に対してではなく、『コンピュータで使うことが出来るフォントプログラム』として、認められるものなのです。
この辺りの説明は長くなってしまいますので、また次の機会に詳しく書きます。
ここでは、『フォントファイルにも著作権がある』ということだけ、知っておいてください。
さて、フォントの著作権は、フォントの作者(メーカー)が所持、管理しています。
上でも書いたように、デザイナーやデザイン会社は、広報媒体や広告媒体、商業印刷物などのデザインに使うために、フォントメーカーにお金を払って、フォントを使わせてもらう権利を買っているのです。
楽曲の著作権を作曲家や作詞家の方が持っていて、それを使用する時にはJASRACにお金を払わなければならない、というのと同じですね。
モリサワのようなプロ向けの商用フォントだと、利用するのに先ほど書いたようなライセンス契約が必要だったりしますが、それとは違ってCD-ROMなどにフォントファイルが収録されていて、買えば永久的に利用権を得られるものがあったり、ネット上で無料で配布され、商用利用まで自由とされているフォント(フリーフォント)があったりと、利用が許される範囲やパターンは、それこそ無数にあります。
この辺りは全てフォントの作者次第で、使う場合は各々のフォントの作者(著作権者)が公開している利用規約をいちいち読んできちんと理解し、従わなければなりません。
ネット上にある絵や写真などと、同じですね。実のところ、かなり面倒な話です。
でも、面倒だからと言って許可なしにどこかで手に入れたフォントを使って商用利用したりすれば、作者の権利を侵害していることになるので、裁判を起こされたり損害賠償を請求されたりする可能性が出てくることになります。
商用でなくとも、ちょっとした使い方一つでアウトになる可能性があったりするので、フォント使用の問題は実のところかなりデリケートで怖いものなのです。
今では誰もが普通に扱うようになっているのに、意外とみんなその怖さに気がついていません。
ネットがこれだけ普及してきた今、著作権に関してはもう少し一般に、キチンとしたリテラシーを行き渡らせる努力が必要ではないか、と私は普段から考えています。
(ここにいらしてくださった皆さんには、こうしてまた、私なりにいろいろ伝えていきたいと思っています。)
日野多磨工房は吹けば飛ぶような零細オブ零細企業ズですが、これでも一応商用デザインも制作していますし、著作権、知的所有権の問題などについてはいつも必要以上に神経を尖らせ、細心の注意を払っています。
その意味でも、モリサワのように利用規約や権利の範囲が隅々までしっかりと明示されていて、その一種類のルールに従うだけで数多くのフォントを何の不安もなく扱えるというのは、実際とても有り難かったりするんですよね。
次回予告(?)
・・・・・
今回著作権の話が出ましたので、もう少し掘り下げてきちんとまとめてみたいと思っています。